高齢の親との暮らしの中で、「なんとなくしんどい」「モヤモヤする」と感じることはありませんか? 介護は特別なものに思えますが、実は知らぬ間に始まっていることもあります。例えば、運転免許の返納を拒む親に不安を抱くなど、日常の中で感じるストレスも「介護のしんどさ」の一つかもしれません。
Chiarettaの親との暮らし相談室では、親の本音を理解し、子世代の負担を軽くする情報をお届けします。少しでも気持ちが楽になれば嬉しいです。
目次
1. 親の介護がしんどい要因
1-1.身体的な不安
1-2.精神的な負担
1-3.経済的な負担
2. 介護のしんどさを軽減するための対策3つ
2-1.家族で役割分担をする
2-2.介護サービスを利用する
2-3.施設に入居する
3. 親の介護に限界を感じた時は専用の窓口に相談しましょう
4. まとめ
1. 親の介護がしんどい要因
1-1. 身体的な負担
親が高齢になると、これまで当たり前にできていたことが、少しずつ難しくなっていきます。
例えば…
- 以前は健康意識が高く、栄養バランスを考えて食事を作っていたのに、最近はレトルトやインスタント食品ばかり。買い物に行く回数も減ってきた。
- おしゃれに気を使っていた人が、毎日同じ服を着るようになり、パジャマにも着替えなくなった。
- ごみ捨てや掃除をしなくなり、部屋の中が散らかっている。
こんな変化に気づくと、最初は「えっ、どうしたの?」と驚きますよね。そして、慌てて掃除をしたり、買い物に行って作り置きをしたり、洗濯をして翌日の服を用意したり…。
これだけでも、かなり体力を使います。
もし親と離れて暮らしているなら、移動の負担も加わります。親の年齢が上がるにつれ、こちらも年齢を重ねるので、疲れやすくなることもあるでしょう。
さらに、通院の付き添いが加わることも少なくありません。
こうした一つひとつのことは、小さく見えるかもしれません。でも、いくつも積み重なると大きな負担になり、気づかないうちに疲れや不安を感じてしまうものです。
1-2. 精神的な負担
親が高齢になると、子世代の体力的負担と精神的負担は切り離せなくなってきます。
例えば、前述のように買い出しや作り置き、洗濯や洋服の用意、掃除などを「親のために」と一生懸命行ったとします。
でも、ふと気づくと作り置きの料理には手をつけず、インスタント食品ばかり食べている。せっかく用意した洋服も着替えず、同じ服のまま…。
その姿を見たとき、「ここまでやってあげたのに、なんで?」と、やるせなさや悲しさがこみ上げてくることもあるでしょう。
この時点で、すでに精神的な負担は大きくなっています。
さらに…
- 一人っ子の場合:「これからずっとこの状態が続くのか…。しかも、自分ひとりで担わなければならないの?」というプレッシャーや絶望感に襲われることもあります。
- 兄弟姉妹がいる場合:「私ばかりが負担を背負っている…」「兄はお金も手も出さないくせに、口だけ出して偉そうに…」と、不公平感や理不尽さに悩まされることも。
- 親のためにと、忙しい中時間を作り、買い出しや洗濯、掃除をしても、それが無駄だったと感じてしまう状況を目の当たりにすると、精神的な疲れがどっと襲ってくることも。
このように、高齢の親の介護が始まると、精神的な負担も大きくのしかかってくるのです。
1-3. 経済的な負担
親が高齢になると、本格的な介護が始まる前でも、意外と小さな出費が積み重なっていきます。
例えば…
- 通院に付き添ったときの電車賃やガソリン代、ついでのランチ代
- 買い出しの際の食品代(硬いものが食べられないなどの配慮が必要な食材・食品)
- 遠距離介護の場合、自宅と実家の往復交通費
- これらのために仕事を休んだ場合の減収(給与が減る不安)
どれも「親のために」と思って出すお金ですが、日々の暮らしの中では意識しづらいもの。
でも、気づけば
「あれ? 思った以上に出費が増えている…」
なんてことも。
ちりも積もれば、経済的な負担となり、じわじわと家計を圧迫してくるのです。
そして、介護度が上がってくると…
- デイサービスやショートステイの利用料
- 介護食や誤嚥予防のとろみ剤
- 体を拭くケア用品やおむつ代
- 福祉用具のレンタル費用
- 高齢者施設の入居一時費用、月々の費用
ここまで来ると、介護保険サービスや自治体の支援制度を利用できる場合もあります。
また、雇用保険に加入している人なら、介護休業給付金を受け取れる可能性も
とはいえ、
「いったい、どれくらいお金がかかるのか? いつまで続くのか?」
と考えると、不安になりますよね。
介護の経済的負担は見えづらいからこそ、事前にしっかり把握し、備えることが大切です。
2. 介護のしんどさを軽減するための対策3つ
2-1. 家族で役割分担をする
介護の負担が特定の人に偏ると、
「なんで私ばっかり…」「通院だけじゃなく買い出しも…」「気づけば出費がどんどん増えてる…」と、しんどさが積み重なってしまいます。
限界を迎える前に、家族で役割分担を決めておくことが大切です。
その際、意識したいポイントを3つご紹介します。
1.主介護者を決める
まず、一番身近でお世話をしている人を「主介護者」として決めます。
主に同居している家族や、近くに住んでいて頻繁に訪問できる家族が適しています。
ただし、
「俺が長男だから、俺が決める!」
「親の世話は長男の嫁がするもの!」
といった昔ながらの考えを押しつけるのはNG。
こうした決め方では話がまとまらず、かえってトラブルの元になります。
誰が一番親の近くで関わっているのかを考えて、冷静に決めましょう。
2.できることを分担する
主介護者の負担が偏らないよう、手伝えることをリストアップします。
- 遠方に住んでいる場合、物理的に動くのが難しければ「資金援助」を担当する
- 「たまには外食でもして休んでね」と、主介護者をねぎらう費用を出す
- 「毎日1分だけ電話する」など、高齢の親が孤独を感じない工夫をする
そして、一番やってはいけないのが、 「手は貸さないのに口だけ出す」 こと。
「こうした方がいいんじゃない?」と意見を言うだけで何もしないと、主介護者の負担が倍増してしまいます。
家族みんなが関わることで、主介護者の「ひとりで抱え込まなくていいんだ」という安心感につながります。
3.主介護者への感謝を伝える
主介護者は、見えにくい部分でもたくさんの負担を抱えています。
「いつもありがとう」「なかなか手伝えなくてごめんね。本当に助かってるよ」と言葉で伝えるだけでも、心が軽くなるものです。
介護は、高齢の親だけでなく、支えている家族みんなで乗り越えていくもの。
お互いを思いやりながら、協力していきましょう。
2-2.介護サービスを利用する
家族で介護を分担しても主介護者の負担が大きくなってしまう場合があります。そんなときは、一人で抱え込まずに介護サービスを活用してみませんか?
「全部お願いするのは気が引ける…」という方も、食事の準備や入浴など、負担の大きい部分だけをプロに頼ることができます。
◆まずは、介護保険で受けられるサービスをご紹介します。
介護保険で利用できるサービスを利用するには、事前に認定が必要です。 「どこに相談すれば?」という方は、お住まいの地域包括支援センターや区役所へ。気軽に相談してみてくださいね。
サービスは大きく以下の3つがあります。
1)居宅サービス
訪問 | 訪問介護・訪問看護・訪問入浴介護・訪問リハビリテーション |
通所 | 通所介護(デイサービス)・通所リハビリテーション |
短期入所 | 短期入所生活介護(ショートステイ)・短期入所療養介護 |
福祉用具 | 福祉用具貸与・特定福祉用具販売 |
民間施設 | 特定施設入居者生活介護 |
2)施設サービス
公的施設:介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム・特養)・介護老人保健施設(老健)
・介護医療院・介護療養型医療施設
3)地域密着型サービス
訪問:定期巡回・随時対応
訪問介護看護・夜間対応型訪問介護
通所:地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護
通所・訪問・宿泊(ショートステイ)の複合:小規模多機能型居宅介護
・複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)
・施設利用:定期巡回・地域密着型特定施設入所者生活介護
・地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
詳細についてはコチラをご覧ください!
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/
(厚生労働省:介護事業所・生活関連情報検索)
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と、ここで!
「介護認定から外れてしまった人はどうすればいいんだ!!」という方もいらっしゃいますよね。
このような「健康以下、認定未満」というご家族にはこちらをご案内します。
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◆介護保険適用外サービス4選!
こちらは民間の介護サービスになります。そのため介護認定を受けていなくても利用できるサービスです。
保険適用外のため少しお高く感じると思いますが、必要なサービスをうまく組み合わせて利用して介護者の体力的、精神的負担を軽減してください。
1)配食サービス
高齢者や要介護者向けに、栄養バランスの取れた食事を自宅まで届けるサービスです。民間企業やNPO法人などが提供しており、利用者の健康状態や嗜好に合わせたメニューを選択できます。
・ライフデイ(LIFE DELI)
・シルバーライフ(SILBER LIFE)
2)移送サービス
通院や買い物など、外出が困難な方のために、専用車両で送迎を行うサービスです。タクシー会社や福祉事業者が提供しており、車椅子対応車両や介助員の同乗など、利用者のニーズに合わせた対応が可能です。
・アイラス福祉移送ネットワーク(関東中心)
・つばめタクシーグループ(愛知・岐阜・三重中心)
・宝タクシー(宝交通株式会社:名古屋近郊)
4)見守りサービスリ
定期的な訪問や電話連絡を通じて、高齢者の安否確認や生活状況の把握を行うサービスです。セキュリティ会社や通信事業者が提供しており、緊急時には迅速な対応が期待できます。
・セコム・ホームセキュリティ(親の見守りプラン)
・ALSOK(高齢者みまもりサービス)
★★ぜひ知ってほしい!レスパイトケア★★
レスパイトケア(Respite Care)とは、在宅で介護をしている介護者(主に家族)の負担を軽減するため、介護者が一時的に介護から離れ休息をとるためのサービスのことです。
介護者が休息(レスパイト)を取ることで、心身の負担を軽くし、継続的な介護ができるよう支援する目的があります。
- 施設系レスパイトケア
一時的に介護施設で高齢者を預かるサービスです。
ショートステイ(短期入所) | 介護施設で数日~1週間程度宿泊 |
デイサービス(通所介護) | 日帰りで施設を利用 |
老人ホームの体験入居 | 老人ホームの体験入居 |
- 訪問系レスパイトケア
介護者が自宅で休息できるように、専門のスタッフが訪問して介護を代行するサービスです。
訪問介護(ホームヘルプ) | 食事、排泄、入浴介助など |
訪問看護 | 医療的ケアが必要な場合の看護師の訪問 |
訪問リハビリ | 自宅で理学療法士・作業療法士によるリハビリ |
- 医療系レスパイトケア
在宅で医療的ケアを受けている方を対象に、一時的に病院や医療施設で受け入れるサービスです。
レスパイト入院 | 在宅療養中の方が短期間入院し、家族が休息をとる |
2-3. 施設に入居する
高齢両親の心身の状態によっては、早めに施設への入所を検討した方が良い場合もあります。
例えば、介助が必要な状態で夜間に何度もトイレに行く場合や、認知機能の低下により24時間のケアが必要になった場合などは、介護者に大きな負担がかかります。
また、施設にはバリアフリー設備が整っているため、自宅よりも安全で過ごしやすい環境が整っています。親の生活の質を保ちつつ、介護する側の負担を減らすためにも、施設入所は選択肢の一つとして考えておくとよいでしょう。
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でも、ちょっと待って!
「親に施設へ入ってもらうのはハードルが高い…」 「頑なに拒否されている…」
そんな悩みを抱えている方も多いですよね。 実は、こんなデータもあるんです。
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「施設入所」と聞くと、重度の介護が必要な人が入るものというイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、実際には要支援1・2や要介護1・2といった比較的軽い介護度の方が入所するケースも少なくありません。
以下のような理由で、施設への入所を決めた方もいます。
- 遠方に住んでいる親が一人暮らしで、何かあったときが心配なので施設を検討しました。
- 持ち家の管理が難しくなり、売却を考えたタイミングで施設への入所を決めました。
- 自分自身が歳を重ね、腰痛などが悪化して介護ができなくなってしまいました。
- 在宅介護をしていましたが、負担が大きくなり、ストレスで爆発する前に施設への入所を決断しました。
- 仕事との両立が難しくなり、家族関係が悪化しそうだったので、施設を利用するのが最善の選択だと考えました。
- 転倒して骨折し、入退院を繰り返すようになったことで、主治医やケアマネジャーから入居を勧められました。
- 冬場の火の取り扱いが危なくなったため、寒い時期だけ施設を利用しました。
中には、高齢で独居暮らしをしていた方や脳梗塞を発症した方など、「不安を安心に変えることができた」「やむを得ず入所したけれど、結果的には良かった」と感じているケースもあります。
まだ元気なうちに、新しい環境に慣れてもらうことで、より快適な生活を送れるようになるかもしれません。
出展:LIFULL介護
https://kaigo.homes.co.jp/manual/voice/choose/good/
3. 親の介護に限界を感じた時は専門の窓口に相談しましょう
親が高齢になると「えっ!?なんで!!」とビックリするような状況に直面したり、以前からは考えられないような変化を見せることが増えてきます。
それらを目の当たりにした子世代は一瞬、頭が真っ白になり絶望的な気持ちになってしまうことがあるかもしれません。
冒頭でも申し上げたように「介護」は、小さな変化が積み重なり、気づかないうちに始まっていることが少なくありません。
自分では介護状態にあると思っていなくても、専門家とお話してみたら「よく頑張ってきましたね」「大変だったでしょう?」という声掛けをもらうこともあります。
高齢親との暮らしや関係性がしんどいと感じたら限界を迎える前に専門の窓口にぜひ相談してください!
以下に相談窓口をご紹介します。
◆地域包括支援センター
厚生労働省は、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい生活を続けられるよう、「地域包括ケアシステム」の構築を進めています。
その中核となるのが「地域包括支援センター」です。市町村が設置し、高齢者や家族の 総合相談、権利擁護、地域の支援体制づくり、介護予防の支援 などを行い、保健・医療・福祉を包括的にサポートします。
地域包括支援センターには以下の専門家が配置されており、高齢者の様々な困りごとに対して、総合的に相談に乗ってもらえる機関です。
・保健師(あるいは経験豊富な看護師)
・社会福祉士
・主任ケアマネージャー(主任介護支援専門員)
◆お住いの市役所・区役所
地域住民の介護に関する総合的な相談ができます。以下の申請や手続は市役所・区役所で行うことができます。
また相談内容により、地域包括支援センターでの相談が適していると判断される場合は、対象の地域包括支援センターの紹介をしてくれたり、要介護認定の申請が必要だと判断される場合は申請に関する案内をしてくれます。
・要介護認定の申請
・介護保険制度の利用手続き
◆社会福祉協議会
社会福祉協議会(社協)は、全国・都道府県・市区町村ごとに設置され、高齢者や障がい者、子育て世帯など、地域住民の福祉を支援する団体です。各地域の特性に応じた福祉サービスを提供し、ホームヘルプサービス(訪問介護)や高齢者向けのサロン活動なども行っています。
また、福祉の総合窓口として、ボランティア団体の支援や各種ネットワークを活用し、地域に根差した支援を展開。介護サービスに関する苦情相談も受け付けています。
4. まとめ
高齢の親との暮らしに「完璧な正解」はありません。
ライター自身も高齢母の介護をする中で、思いがけない出来事の連続に驚かされる日々です。子どもの頃に「よそはよそ、うちはうち」と言われたように、それぞれの家庭に合ったやり方があるのだと実感しています。
親の介護は、身体的、精神的、経済的な負担が重くのしかかり、「しんどい」と感じてしまうのは当然のことです。
そんな時は、一人で抱え込まずに、家族で役割分担をしたり、介護サービスや施設の利用を検討したりしてみましょう。
介護保険サービスだけでなく、保険適用外の民間サービスやレスパイトケアも上手に活用するのがおすすめです。
「もしかして、もう介護が始まっているのかも?」
「親との暮らしがしんどい」
そう感じたら、地域包括支援センターや市役所・区役所、社会福祉協議会などの専門機関に相談してみてください。
専門家と話すことで気持ちが楽になったり、新たな解決策が見つかったりすることもあります。
少しでも心穏やかに過ごせるヒントになれば嬉しいです。
